当てにならない映画メモ

つまらない?見方を変えれば面白い

素晴らしきかな、人生

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主演クラスの演技派俳優が多いので見応えはありました。話はストレートなんですが、抽象的な概念を擬人化してそれを演じるってアイディアはちょっと感情移入しにくかったです。でも、面白いアイディアなので心理学に少し興味が湧きました。

とりあえず映画の言いたいことを分かりやすく言えば、1人の友人を救おうとしたら自分らも救われた、「情けは人の為ならず」という話です。大人向けの童話ですね。

それにしても、ウィル・スミスとケイト・ウィンスレットだけで十分、良い映画作れるのに何故、こんなに俳優を揃えてしまったのか疑問ですね。

GONIN サーガ

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氷頭を演じるために十年ぶりに復帰した根津甚八の圧倒的な存在感がこの映画を完全に支配していました。主人公の行動の動機になるなどキーポイントになるのは常に氷頭というのが良いですね。話の流れを止めず逆に加速させ更に奇妙な世界観を生み出す効果を持たせる回想シーンの使い方は上手いなと思いました。前作を観てなくてもすんなりと状況を理解できるのも良いポイントです。映像表現の手本になりました。

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病により車椅子生活を送っていた根津甚八ですが、監督の熱心な説得により出演を決断したそうです。この出演の翌年に亡くなりました。黒澤明監督作品に出演した著名な俳優が亡くなっていくのは寂しいものです。仲代達矢もそろそろ。。

父親の意思を引き継ぐ菊池麻美を演じる土屋アンナも役とシンクロする部分があり本領発揮していました。半裸の土屋アンナの風呂場のガンアクションがタランティーノ風で興奮しました。東出昌大は印象が薄いものの丁度良いキャラ設定でした。酸素吸入しながら襲って来るヒットマンを演じた竹中直人も悪くはないですが、やっぱり北野武にやってほしかったですかね。テリー伊藤はミスキャスト、見るに堪えないです。。

ラ・ラ・ランド

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このスケールの大きさはなかなか邦画では味わえませんね。スクリーンが大きい映画館で観るのが良いと思います。最初のシーンを何度も観たいと思うはずです。

ミュージカルといってもダンスシーンがそれほど多くなく、脈絡もなく踊りだす気恥ずかしさはあまり感じずミュージカルに慣れない人にはとっつきやすい内容だと思います。個人的な体験にすこーし重なることもあり、結構、切なかったです。切ないミュージカルは珍しいですね。海外予告の方がしっくり来ます。

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「ラ・ラ・ランド」の監督は「セッション」のデミアン・チャゼルなので、ある程度、モダン・ジャズの知識があると台詞の意味を理解できより楽しめます。バードの愛称で呼ばれたサックス奏者を知っていると良いと思います。また、「カサブランカ」のイングリッド・バーグマン、「エデンの東」のジェームズ・ディーンを押さえておくと楽しさが増します。ストーリーはまあ妥当なラインなんですが、小ネタ満載で映画好きには堪りません。

雨に唄えば」や「ウエスト・サイド物語」の迫力のあるダンス、「メリー・ポピンズ」や「サウンド・オブ・ミュージック」の歌唱力、「マイ・フェア・レディ」の王道シンデレラストーリーには敵わないけれど、まだ三十代の監督の往年の名作への愛を感じられて、監督に「夢が叶っておめでとう」と言いたくなりました。

きみはいい子

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 特別支援学級(特殊学級)を扱う映画は初めて観ました。自閉症の子を演じた加部亜門君の演技は素晴らしかったです。本当に自閉症の子なのかと思いました。自閉症の子と家庭事情に悩む子が平等に描かれている点が非常に良かったです。

迫真の演技で母親が娘を虐待するシーンはリアリティーがあり痛々しくしんどかったですが、このシーンがあるから最後に爆発的な感動が生まれるのです。池脇千鶴の近所のおばちゃん感には笑ってしました。こういう人、確実にいます(笑)

学級崩壊に悩む新任教師、自身も虐待を受けて育ち我が子を虐待してしまう主婦、認知症の兆しがある独居老人と自閉症の子の交流、三つのストーリーラインが直接的には交差せず進むというのは「恋人たち」と同じ構成なのですが、「きみはいい子」の方が社会的なテーマが強くて個人的には好みですね。

印象的なシーンが多く忘れられない名作なので多くの人に観てもらいたいです。

日本で一番悪い奴ら

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外国人を相手にスリリングな取り引きができる精神力に驚きましたね。しかも、実話なのでさらに驚き。パキスタンとロシアまで不祥事に関わって来るので、国際的な背景にも注目できる傑作でした。

組織内での出世のために大罪を犯すことに罪悪感を覚えないのは、ナチス内での保身のためにホロコーストを平然と実行に移したアイヒマンの心理状態に近いものを感じました。ただ、ナチス内部では死の恐怖が常にあったのに対して、純粋な忠誠心が動機にあり組織にある危険性をよりストレートに身近に感じました。善意が良心を麻痺させることほど恐ろしいことはないですね。

愚行録

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サスペンスなので内容には触れません。観た後に考察し合える映画なので数人で観るのがいいと思います。「淵に立つ」ほどの衝撃はないものの(洋画サスペンスでは普通にある様な衝撃レベル)じわじわと来る後味の悪さがありました。それにしても予告編で色々見せ過ぎなのは問題ですね。。

序破急で言うと、序の人物のキャラクター説明は視覚的で映画の良さが際立っていますが、破の最後で話の全容が分かってしまい、本来は速度が早まる急が速度変化せず、少し惜しい感じです。それと学生を演じるには年齢的に厳しい俳優が多かったですかね。渇き。の小松菜奈二階堂ふみ橋本愛の三人を起用すればリアル感あったのにな。

クリーピー 偽りの隣人

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黒沢清監督はヒッチコックのドキュメンタリーに出たくらいのヒッチコックファンなので、何となく「サイコ」の雰囲気に似てました。映画の中間ポイントでいくつかのストーリーラインが交差し始めてラストに向けて速度が上がるのは気持ち良かったです。

起承転結もしくは序破急を意識するとホントに映画は楽しくなります。

竹内結子の心が蝕まれて狂気に陥る様がとてもエロティックなのがこの映画の最大の見どころですかね。同監督の「岸辺の旅」の深津絵里も輝いていたように中堅女優の魅力を引き出すのが上手いですね。ヒッチコック並みの変態に違いないです。