「母と暮らせば」と「父と暮らせば」
「母と暮らせば」は、井上ひさしの戯曲「戦後命の三部作」の二部目にあたる映画です。一部目の「父と暮らせば」は黒木和雄監督が原田芳雄と宮沢りえ共演で映画化されています。「母と暮らせば」単品でも楽しめますが、「父と暮らせば」を観ておくと広島と長崎の戦後の暮らしの違いが分かりより一層深く楽しめるのではないでしょうか。
「父と暮らせば」は原田芳雄、宮沢りえ、浅野忠信しか出てこない舞台調のスタイリッシュな映画で原田芳雄と宮沢りえの才能がぶつかり合う様が圧倒的でした。広島といえば「仁義なき戦い」の熱いイメージがあり、激情ほとばしる演出は土地柄とシンクロしていて良かったです。広島のイメージは「この世界の片隅」でだいぶ変わりましたが。
それに対して、「母と暮らせば」は山田洋次監督節全開で新旧国民的アイドルの吉永小百合と二宮和也の共演に加え黒木華が出演しているため起伏が緩やかな映画でした。長崎は元々キリスト教の信仰が根強いので心穏やかな土地柄のイメージがあり山田洋次監督テイストが実にしっくり来ました。あくまでもイメージなので実際には違うのかもしれません。
両作は「父を亡くした娘」と「息子を亡くした母」という対になる設定になっているのですが、「息子を亡くした母」の方が明らかに切なく「母と暮らせば」のラストは胸が張り裂けるほど悲しくなりました。その代わりに「母をもっと大切にしないとな」という気持ちが溢れてきました。
それにしても吉永小百合の若い頃の美貌は髪形さえ変えれば現代でも通用しますね。