この自由な世界で
単にシングルマザー奮闘記で終わるのかなと思いきや、子供の将来を思うあまり、不法入国者に仕事を斡旋する違法行為に手を染めていくのが何とも痛ましかったです。安く雇ってピンハネするわけです。自分の親や子供の学校の担任に育児放棄と責められている母を応援する息子の言葉には泣かされました。低所得であるのを個人の努力不足として責め、更には人格を否定して親子を孤立させる社会に対する怒りが沸き上がりました。
応援したいがやっていることは違法行為だということ、ラストでやってしまう行動は悶々とした感情を生み出しますが、バイクで疾走する逞しい母の姿が清々しく、悶々とした感情を解放してくれて、妙に気持ちが良かったです。
子育て、労働、移民の問題を一つのストーリーラインに無理なくスマートに詰め込んである中だるみを感じさせない見事な脚本でした。こういうシナリオを見ると大半の映画が駄作のように思えてしまいます。
このテーマに障がい者差別を取り込んだ「わたしは、ダニエル・ブレイク」を週末、観てきます。