当てにならない映画メモ

つまらない?見方を変えれば面白い

マンチェスター・バイ・ザ・シー

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ラ・ラ・ランド」「ムーンライト」「フェンス」と昨年度のアカデミー作品賞ノミネート作品を観てきましたが、脚本賞を獲っただけあり本作が断トツにストーリーが素晴らしかったです。

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兄が亡くなり、突然、甥っ子の後見人になる男の葛藤を描いた映画です。甥っ子の青春を謳歌している街を出たくないと思いと叔父の青春を謳歌したために過ちを犯した過去のある街を離れて甥っ子の面倒を見ていきたい思いのぶつかり合う様が殺伐とせずどことなく温かみがある前半、叔父の元妻の登場により暗い過去が明るみになり状況が一変する後半、そして、全ての伏線が回収されて感動を畳みかけてくるラスト。そこに死してなお兄の弟を想う気持ちが生き続けているわけです。人間関係そのものが伏線というのが面白いですね。完璧な序破急、これぞハリウッド映画の真骨頂。撮影についてはアップを多用しないケン・ローチ風なのが感動を強要させずかえって強い感動を生み出しています。

この映画を企画し実現したマット・デイモンとアフレック兄弟の友情にも感動します。この感動はマット・デイモンとアフレック兄弟共演の「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」を思い出しました。マット・デイモンの脚本が見事でした。

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大して感情移入できず起伏のないストーリーであった「ムーンライト」が作品賞に選ばれたのはボイコットしかねない黒人へのサービスに加えて反トランプ政権の時勢に乗っかったアカデミー会員の思惑があった気がしてなりません。差別に配慮することは決して悪いことではありませんが、優れた作品に賞を与える原則を崩すことがあってはなりません。ただ、差別のせいで黒人の才能が伸びていかないという現実があるとは否めません。

今年の上半期の洋画は「マンチェスター・バイ・ザ・シー」と「人生タクシー」、「はじまりへの旅」が首位争いしています。次点に「わたしは、ダニエル・ブレイク」「コクソン」。近日公開の「20センチュリー・ウーマン」「セールスマン」「メッセージ」が気になるところです。邦画は河瀨監督、是枝監督、石井裕也監督の新作映画に期待しています。