当てにならない映画メモ

つまらない?見方を変えれば面白い

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ

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「ぼくたちの家族」のリアリティーには心打たれましたが、またしても石井裕也監督が傑作を生みだしてくれました。池松壮亮が片目を失明している青年を演じているのですが、それはつまり情報に溢れすぎて物事の本質が隠されてしまって物事の半分しか理解できない日本社会の暗喩であり、共有情報を当てにするあまりアイデンティティーが欠如し慢性的な集団ヒステリーを潜在的に抱え込んでいる社会への漠然とした不安の象徴でもあります。貧困に陥る若者や外国人労働者の問題にも触れています。

もし、これを小説にしたのならかなり厭世的な気持ち悪い作品に違いありませんが、原作が詩集であるためかドライでクールなハードボイルドタッチな映画になってました。また、詩のフレーズが何度も繰り返されるうちにその意味に直感的に気付いていけるのが心地良かったです。結末はすがすがしかったです。三十代前半の監督が日本映画の水準をまた一つ上げてくれました。

「ぼくたちの家族」では当時55歳の原田美枝子認知症が発症した途端に魅力倍増する母親役にノックアウトされましたが、今回は原田美枝子の娘で映画初出演&初主演の石橋静河が見せる都会慣れした女性の引きつった笑顔が堪りませんでした。既に池松壮亮を上回る貫禄がありました。あまり華がないが抜群の演技力を持つ安藤サクラ系の女優が増えるのは良い傾向です。