当てにならない映画メモ

つまらない?見方を変えれば面白い

日本で一番悪い奴ら

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外国人を相手にスリリングな取り引きができる精神力に驚きましたね。しかも、実話なのでさらに驚き。パキスタンとロシアまで不祥事に関わって来るので、国際的な背景にも注目できる傑作でした。

組織内での出世のために大罪を犯すことに罪悪感を覚えないのは、ナチス内での保身のためにホロコーストを平然と実行に移したアイヒマンの心理状態に近いものを感じました。ただ、ナチス内部では死の恐怖が常にあったのに対して、純粋な忠誠心が動機にあり組織にある危険性をよりストレートに身近に感じました。善意が良心を麻痺させることほど恐ろしいことはないですね。

愚行録

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サスペンスなので内容には触れません。観た後に考察し合える映画なので数人で観るのがいいと思います。「淵に立つ」ほどの衝撃はないものの(洋画サスペンスでは普通にある様な衝撃レベル)じわじわと来る後味の悪さがありました。それにしても予告編で色々見せ過ぎなのは問題ですね。。

序破急で言うと、序の人物のキャラクター説明は視覚的で映画の良さが際立っていますが、破の最後で話の全容が分かってしまい、本来は速度が早まる急が速度変化せず、少し惜しい感じです。それと学生を演じるには年齢的に厳しい俳優が多かったですかね。渇き。の小松菜奈二階堂ふみ橋本愛の三人を起用すればリアル感あったのにな。

クリーピー 偽りの隣人

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黒沢清監督はヒッチコックのドキュメンタリーに出たくらいのヒッチコックファンなので、何となく「サイコ」の雰囲気に似てました。映画の中間ポイントでいくつかのストーリーラインが交差し始めてラストに向けて速度が上がるのは気持ち良かったです。

起承転結もしくは序破急を意識するとホントに映画は楽しくなります。

竹内結子の心が蝕まれて狂気に陥る様がとてもエロティックなのがこの映画の最大の見どころですかね。同監督の「岸辺の旅」の深津絵里も輝いていたように中堅女優の魅力を引き出すのが上手いですね。ヒッチコック並みの変態に違いないです。

キャロル

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ルーニー・マーラがどうしようもなく可愛かったです。あの目力を持つカメラ女子は反則!「ドラゴン・タトゥーの女」と同じ女優と思えません。

もうそれだけで大満足なのに、ケイト・ブランシェットの昔のハリウッドスターのような圧倒的な存在感にとどめを刺されました。「アビエーター」で演じたキャサリン・ヘプバーンのイメージにぴったりの格好良い女性ですよね。

魅力がある人を好きになることは自然なことでたまたまその相手が同姓だったという切り口はすんなりと感情移入できて良かったです。表情にこんなにも説得力を感じる映画にはなかなか出会えません。女性の内面を少しでも理解できたことは今後、人間関係を構築する上でプラスになると思いました。精神年齢が低い自分にとってルーニー・マーラと共に成長していくような感覚がありました。

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マリアンヌ

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ロバート・ゼメキス監督といえば「フォレスト・ガンプ」や「ザ・ウォーク」のような畳みかけて来る詩的なナレーションが印象的でそれを楽しみにしていたのにナレーションすらないのは個人的には寂しかったのです。ひねりがないストーリー展開なので、様々なドラマや映画を目にしている現代人には物足りなさを感じるかもしれません。

カサブランカ」を彷彿させるものがあり、それならいっそのこと「カサブランカ」をベースにもう少し入り組んだシナリオをロバート・ゼメキス監督に演出してもらいたかったなと思いました。

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ちはやふる 上の句 下の句

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ストーリー展開はよくある様な感じですが、映像表現がとにかく格好良い映画でした。二本続けて観れるほどの面白さがありました。

どっかで聞いた声がすると思ったら「君の名は。」の上白石萌音が出てました。三葉の声で上の句を聞くというのも一つの楽しみになると思います。

撮影当時、現役高校生であった広瀬すず上白石萌音の共演ということもあり、二十代の俳優が高校生役をやる不自然さがないフレッシュな青春映画となっています。「桐島、部活やめるってよ」「リトル・フォレスト」で印象的だった松岡茉優が最大のライバルを務めており、演技力の将来性を期待できる存在感がありました。

サバイバルファミリー

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矢口史靖監督の新境地と言える見応えのある映画でした。わざとらしい笑いを入れずさりげなく笑わせるのが良いです。音楽がほとんど流れず映像がドキュメンタリータッチというのも良いですね。台詞もシンプルでこれぞ映像芸術というものだよなと改めて思わせてくれました。何度も観たくなるとは言えませんが、一見の価値ありです。

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社会的、経済的、医療的な混乱を描いてテーマが増えすぎて訳分からなく映画よりも、電気が使えず困難に立ち向かう家族のみに焦点を当てているシンプルな映画の方が記憶には残ります。「ロッキー」だって恋人のために頑張る、ただそれだけの話なのに世界中の人が感動しているわけです。

それにしても、深津絵里は井戸端会議が似合わないですね。44歳に見えないです。

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矢口史靖監督のように自身のオリジナル脚本で映画を任せられる監督は日本にはあまりいません。30代前半でオリジナル脚本の「ウォーターボーイズ」をロングランヒットさせ、シネコンの普及に一役買った尊敬すべき監督の一人です。

2016年の「君の名は。」「シン・ゴジラ」「湯を沸かすほどの愛」などのヒット作はオリジナル脚本が多かったのでオリジナル脚本映画が増えると嬉しいのですが、今年は漫画実写化が多いので、増えるとしたら来年以降になりそうです。オリジナル脚本映画が増えると嬉しい理由は映画監督の個性が映画に強く反映されるからです。黒澤明監督や園子温監督のように原作を使いながらも原作を超えた映画を作れる場合もあるので、小説や漫画の映画化も決して悪くはないのですが、個性を邪魔することが多いです。