当てにならない映画メモ

つまらない?見方を変えれば面白い

TSUTAYA DISCASとAmazonプライム

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宅配レンタルが登場して十年くらい経ちましたが、サービスが年々良くなってきました。品揃えを考えるとレンタル屋に行くメリットはなくなってしまいました。ヨーロッパ系、中東系の映画はほとんどなくアニメばっかり。

僕の宅配レンタル及び動画配信遍歴は、TSUTAYA DISCAS→DMM→hulu→Amazonプライムなんですが、旧作借り放題の上に動画視聴ポイントが付いてくるTSUTAYA DISCASに戻ってきました。再入会して分かったのは、たまに新作映画をタダで視聴できるキャンペーンを期間限定でやっていること。DMMの宅配レンタルと同じ価格でこのサービスはすごいです。U-NEXTや楽天SHOWTIMEはお得感を感じませんね。

旧作借り放題といっても二枚ずつしか家に届かないですし、観終わってポストに投函して次のが届くのに最低三日はかかるので、お得感を感じるには届いたその日に映画を二本観る覚悟が必要です。頑張れば月に10往復で20本観れます(笑)

AmazonプライムTSUTAYA DISCASの動画配信より画質が良いのですが、メジャーなありきたりの映画が多い感じです。たまにTSUTAYA DISCASにもない掘り出し物が見つかることがあります。価格が安いのでこのまま続けます。松本人志の番組が泣けるほど笑えますしね。

キネマ旬報社の「知っておきたい監督」シリーズを参考にすると価値観を変えてくれる素晴らしい映画に出会えます。

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人生タクシー

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映画なのにあまりにも自然な台詞な上に監督が出てくるので映画とドキュメンタリーの境目が分からなくなるほどでした。更に言えば、説教じみていたり監督の主観的な主張が押しつけがましいということもなく、ドキュメンタリーよりもドキュメンタリーらしい映画でした。最初から最後まで見逃せない内容でした。イランの日常生活と社会情勢に鋭く切り込んでいます。海賊版DVDを販売することを文化活動だと言い放つ小人症のおじさんが愉快でした。監督の姪っ子のハナちゃんは将来、大物になる予感がしますが社会がそれを拒む気がするので何だかやるせないない。。

ドキュメンタリータッチの映画はヨーロッパでは主流ですが、ここまでドキュメンタリーとの境目が分からなくなるほどの映画はなかったので衝撃的でした。この映画の全てが演出だとしたら演技指導の天才ですね。新しい映画の可能性を提示したジャファール・パナヒ監督にはとにかく敬意を表したいです。

イラン政府から映画制作を禁止されているにも関わらず撮影を敢行したわけだから現場には鬼気迫る緊張感があったたろうに、それをどこか楽しんでいる監督の度胸は測りしれないです。この作品への思い入れをひしひしと感じることができました。

聖の青春

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ありきたりの感動を誘う難病ものかと思いきやなかなか屈折してました。命を張らずに将棋を指す健康体である棋士たちに対する怒りを態度に出すために仲間が離れ孤立していき、羽生打倒に向けて命を削りながら自分を追い込んでいくんですが、その緊張感がまるで極道映画や任侠映画のようでした。最後の試合は決闘にしか見えません。主人公の心の支えになるような恋人も全く出てこない、孤高の青春といったところです。予告編の雰囲気とはかなり違いましたね。将棋を極めるわけだから、ある意味では極道なんですけどね。

松山ケンイチの大増量した役作りは「レイジング・ブル」のロバート・デ・ニーロを彷彿とさせ、羽生善治の常人離れした間の抜けた雰囲気を東出昌大がうまく演じ、染谷将太が脇を固めています。若手演技派俳優の熱意を堪能しました。

ジョイ

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なんでこの素晴らしい傑作を劇場公開しなかったのか理解できません。配給会社の目は節穴というかセンスがないとしか言えないですね。ジェニファー・ローレンスロバート・デ・ニーロというアカデミー俳優二人が親子を演じればつまらないはずがないです。この二人に「世界にひとつのプレイブック」のデヴィッド・O・ラッセル監督とくればもれなくブラッドリー・クーパーがついてきます。

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シングルマザーが開発した掃除用品がQVCによって爆発的にヒットする話なんですが、私が幼い頃、母がQVCに釘付けになっていたこともあり強い親近感を持ちました。サクセスストーリーなのにジェニファー・ローレンスがほとんど笑わず、トラブルから来るストレスが絶頂に達した時にショットガンをぶっ放すなど後半は常に緊張感が漂うハードボイルドタッチというのは珍しいです。アメリカ南部で女性が自立して成功することの恐ろしさを理解することができました。

T2 トレインスポッティング

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低学歴と低所得ゆえに悪の道を進む若者たちの溜まり場が都市開発の区画整理により排除され、個性のない画一的なショッピングモールが建ち並ぶ様子が非常に切なかったです。貧困に対する政策が手付かずの政府の責任は追及されず、その代わりに無政策が生んだ若者が逮捕され収監されていく理不尽に対する無力感が根底にありました。他の観客は前作を思い出して笑っていましたが、その笑いこそが無力感を引き立てているわけです。自虐ネタはもちろん最高に面白かったです。

個人的にはここがツボ↓

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ダニー・ボイル監督の代表作に「スラムドッグ$ミリオネア」がありますが、そこにも低学歴と低所得ゆえに不正を疑われる若者の姿があります。そして、ラストシーンの無力感を吹き飛ばす音楽がとにかく素晴らしいです。

はじまりへの旅

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単純明快なハリウッド映画かと思いきや、過激な資本主義批判発言連発で挙句の果てにトロツキズム支持を匂わす発言があり、トランプ支持者が観たら怒り狂うであろう内容でした。共産主義に理想を抱く人は身内や隣人から煙たがられ、ヒッピー扱いされ森の中で暮らすことになってしまうほど肩身が狭いというのはアメリカ国内においては事実かと思います。言論の自由が許されないアメリカは本当に自由の国と言えるのか疑問が湧いてきました。

森に棲む父と子供たちが亡くなった妻の葬式に参列するために街に出ていくわけですが、妻が望んでいた火葬ではなく他の身内が希望する土葬になっていたことから、森家族と妻の親族との対立が深まっていきます。子供たちも街の文化に触れることで親の教育方針に疑問を持つようになっていきます。このように宗教の自由や子供の権利の問題にも触れています。アメリカはあまり日本と変わらないなと思いました。

葛藤や対立をうまく描いており、感情の揺れ動きの表現はハリウッド映画お馴染みのテクニックなのですが、アメリカでこういった内容の映画の企画が通ったことに驚きです。案の定、アメリカ国内では賛否両論が巻き起こりましたが、権利意識の高いヨーロッパ諸国では評価が高くカンヌ映画祭で賞を獲っています。

 

ゴースト・イン・ザ・シェル/攻殻機動隊

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これまでの攻殻機動隊関連作品で描かれたテーマをミックスしたストーリーラインで、マトリックスベースのブレードランナーというテイストで洋画好きには堪らないエンタテインメント作品でした。

思いっきり瞬きしているし、息遣いが生々しかったので、「エクス・マキナ」のアリシア・ヴィキャンデルのバレエ経験を活かした人間的動作の抑制をスカーレット・ヨハンソンは見習うべきかなと思いながらも、アベンジャーズのアクション経験が遺憾なく発揮されていました。

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ホワイトウォッシングだと批判がありましたが、そもそも原作では人種や性別も明記されていないので白人系の義体を選んだ少佐と考えれば、人種の問題はこのさいどうでもいいです。重要なのは人を人たらしめるものは記憶だがそれを信じるべきなのかという葛藤であったり、動物と人と人工知能の違いの探求であったり、膨大なデータから生まれた自我の権利は保障されるのかという点にあります。

最重度身体障害者で記憶障害のある女性捜査官という観点で全ての作品を楽しんでいます。