ドント・ブリーズ
高評価のわりには普通のホラー映画にある様な展開で、あんまり怖くなかったです。。
ブレア・ウィッチ・プロジェクト以降、手ぶれ系のホラー映画がうんざりするほど作られましたが、久しぶりに落ち着いたカメラワークのホラー映画を観れたのは良かったです。
主人公が圧倒的に不利なのにいきなり力が沸き上がるのは火事場の馬鹿力で説明できますが、明らかに複雑骨折した脚を使って走れるのか?腹部に2発銃弾撃ち込まれて気絶しないものなのか?納得できないことが多くて怖さ半減。
物音これはいくらなんでも気づくだろと思うところもありましたね。
「シャイニング」のような映像美から醸し出される恐怖、「悪魔のいけにえ」のような脈絡のない理解し難い台詞から醸し出される狂気、「エクソシスト」のような宗教的な恐怖、「死霊のはらわた」のようなグロテスクな恐怖といった名作ホラーの恐怖には及ばないし、印象にも残りません。
海賊とよばれた男
日本の石油事情について知る良いきっかけになる出光興産の創業者の出光佐三をモデルにした映画でした。劇中では出光ではなく國岡となっています。
監督は「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズ、「永遠の0」の山崎貴監督です。
近代から冷戦までの世界史が大好物な僕にとって、日章丸事件が今の中東の不安定な情勢に多少なりとも関係があることを知れたのは大きな収穫でした。
岡田准一と染谷将太がコンビを組んで営業に繰り出すシーンや堤真一がイランの港にたどり着くシーンが特に印象に残りました。吉岡秀隆は「ALWAYS三丁目の夕日」のキャラ設定と変わり映えしないのが鼻につきました。ピエール滝が真空管を説明するシーンには思わずニヤリとしました。
シナリオは、回想シーンが少し長く、現時点で何をしていたのか忘れそうになったので回想シーンを断片的に散りばめた方が良い気はしましたが、長い映画にも関わらず中だるみ感は全くありませんでした。
戦後の混乱をあまりネガティブに扱っていない点、博多弁と広島弁の響きが関東人の僕からすると似ている点が「この世界の片隅に」に通じるものがあり、鳥肌の立つほどに感動してしまいました。昨年の映画ランキングの二位に入れることにしました。
エベレスト
よくあるパニック映画と思いきや1996年にエベレストで起きた大量遭難事故をも基にしたえ基にした映画で、俳優もネパール側ベースキャンプから更に登った標高6000m付近で演技をするために一年間、トレーニングを積む(特典映像で確認)など本気度の高さが覗えました。
七大大陸最高峰登頂を成し遂げた数時間後に、この事故で亡くなった登山家の難波康子をイギリスを拠点に活動する日本人女優の森尚子が演じているのも評価を上げるポイントです。スポンサーを一切つけず自身の収入と休暇だけで目標を達した難波康子のチャレンジ精神に感銘を受けました。
たった7ヶ月間で世界七大大陸の最高峰を制覇したツアーのガイドのロブ・ホールやアメリカ人の郵便局員で二度目の挑戦のダグ・ハンセンなどのバックグラウンドも描かれているので、エンディングで思わず泣きそうになりました。
難波康子やダグ・ハンセンに親近感を覚えたのが高評価の理由です。
ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
子供向けの映画予告でしたが、ストーリーを追うのが意外と忙しいし、グロいシーンもそれなりにあり、小学校高学年から高校生向けの内容かなと思いました。第二次大戦後のニューヨークのマフィアを描いた映画のような霧が立ち込める暗い雰囲気と共にジャージーな音楽が流れるので、これまでのハリポタシリーズとは全く異なるテイストの映画といってもおかしくないです。
魔法を使うコリン・ファレルは似合わないと思いきや、無言で強力な魔法を連発するシーンに凄みを感じました。ジョニー・デップもワンシーンだけの出演にも関わらず存在感がありました。今後もジョニー・デップのあの役が新シリーズのキーパーソンになりそうです。エディ・レッドメインよりも脇役たちの演技に注目してしまいました。
これまでのハリポタシリーズよりも一世紀近く前の話なので、ダンブルドアとジョニー・デップのあの役くらいしか関連がなく、シリーズを全て見ていなくても娯楽映画として十分に楽しめました。
当てにならない2016年公開映画ベスト10
今年は2010年代最高の邦画の当たり年でした。ベスト10に4つも入りました。観れていないものも多いので正直なところ仮ランキングです。1位2位は動くことは有り得ませんが、それ以降の順位は変わる可能性は高いです。
未観の「スポットライト 世紀のスクープ」「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」「海賊とよばれた男」「怒り」あたりがランキング入りしてもおかしくないです。
「シン・ゴジラ」「オデッセイ」「ザ・ウォーク」「ブルーに生まれついて」「ルーム」「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」なども面白かったですがランキング入りには及ばず。選ぶことが非常に難しかったです。
10位
やり過ぎ感は否めませんが、アクションシーンのテンポはこれまでのシリーズを踏襲していて見応えのあるものでした。ギリギリランキング入りした理由は、ラストが格好良かったという点に尽きます。
9位
リップヴァンウィンクルの花嫁
黒木華の天然っぷりのおかげで全体的にのほほんとしていますが、かなりシリアスな社会風刺をしています。といっても具体的に社会問題についての説明はなくストーリー自体も輪郭がはっきりとしないので社会派ドラマとは程遠いですが、あえてそうした理由には岩井俊二監督の皮肉が込められているように思いました。まるでカフカの「城」を読んでいるような浮遊感が心地よくランキング入りしてしまいました。
8位
追憶の森
君の名は。が一番盛り上がっていた時期に上映されていたので存在感はかき消されていましたが、日本の自然の美しさを感じさせ、遠野物語の世界観を丁寧に描いた作品でした。少しアクの強い渡辺謙の演技が控えめでこれぐらいが丁度良いと思いました。
7位
海よりもまだ深く
阿部寛のダメ親父っぷりが妙にはまり役で、ハッピーエンドともバッドエンドとも言えない終わり方がリアリティーを醸し出していました。日本の俳優の演技力の底力を見ることができました。
6位
レヴェナント 蘇えりし者
ディカプリオの迫真の演技はこれまでの作品でトップクラスだと思いました。アカデミー賞を獲れたのも納得です。カメラの長回し撮影はかなり大変だったと思います。
5位
スティーブン・スピルバーグ監督がジェームズ・ドノバンを描いた実話もの。冷戦時代の捕虜交換をあくまでも一つの案件として冷静に解決する肝の座った態度に感服しました。ジェームズ・ドノバンのちにピッグス湾事件の1113人の捕虜解放の交渉をケネディ大統領に依頼されています。
4位
困難な状況でも冷静さを失わず、周りの協力者や家族を労わる紳士的な態度には敬意を払いたくなりました。周りからは英雄視されながらも、「パイロットとしてやるべきことをやったまでです。」と謙虚さを失わないので、職人気質の格好良さに痺れました。クリント・イーストウッド監督には、まだまだ映画を撮り続けてほしいです。いつ最後の映画になるか分からないので、彼の作品は必ず映画館で観るようにしています。
3位
新海誠監督作品の中では最も新海誠らしくない映画でしたが、既存の映画の良いところをうまくミックスしたシナリオには感服しました。
2位
同性愛者を扱った作品は多いですが、共感が持てた映画はこれが初めてでした。夫が同性愛者だと分かった後も世界初の性適合手術を心から応援する奥さんの姿と性別を超えた夫婦の愛には心を打たれました。
1位
この世界の片隅で
とにかくゴタク抜きで見てほしいです。刻々と原爆投下の日に近づいて行き、愛らしい登場人物達がどういう結末を迎えるのかハラハラしました。大切なものを失いながらも逞しく日常生活を送った人達がいたからこそ今があるんだと感謝の念で心が満たされました。当時の生活の知恵をリサーチするのは大変だったと思います。